私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
こんなに気遣ってくれるなんて、炯さんは本当に素敵な人だ。
私も炯さんに釣りあう人間になりたいな……。


今後の打ち合わせを終え、炯さんは私を家まで送ってくれた。
ついでに、両親から私の引っ越し許可を取ってくれるらしい。
そんなの、自分で話をすると言ったものの。

「そういうの、凛音のいいところだし、任せたいけどさ。
こういう話は俺からしたほうがすんなり上手くいくの。
それに俺は今から凛音を悪い子に染めていくんだからな。
少しでもよき夫という印象を植え付けておかないといけない」

まるで悪戯を企む子供のように、炯さんは楽しそうだ。

「そうですか」

「そうなんだ」

なんだかおかしくて、くすくすと笑ってしまう。
想定していたものとは違い、彼とは楽しい結婚生活を送れそうだ。
ただし、あまり家に居ないのは淋しいけれど。

父は炯さんから話があると言われ、少々緊張しているように見えた。
もしかしたらふたりにしていたあいだになにかあり、破談を切り出されるのかもしれないなどと思っているのかもしれない。

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