私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
私とレンズ越しに目をあわせ、彼がにっこりと微笑む。
そこまで考えてくれているなんて思わなかった。

「ありがとうございます」

世の中にこんなに素敵な男性がいるなんて知らなかった。
これは今まで、私の住む世界が狭かったからなのかな。

リビングに戻ってきたら、お茶の準備がしてあった。

「紹介するな。
お手伝いのスミさん」

「スミでございます。
以後、よろしくお願いいたします」

準備をしてくれていた、初老の女性が頭を下げる。

「凛音です。
こちらこそ、よろしくお願いします!」

私も慌てて、頭を下げ返した。

「うちにはあと、今日は休みだがもうひとりお手伝いのミドリと、シェフがいる」

「はい」

お手伝いさんなどの存在に驚きはない。
うちだって何人もいたし。

「これからはスミとミドリは週に二日、日曜ともう一日、重ならないように休みとなる。
シェフは土日が休みだ」

「これから……?」

そこが少し、引っかかった。
もしかして私が引っ越してくるのに伴い、勤務体系が変わるんだろうか。
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