私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
「今までは俺が出張に行っているあいだは基本、休みだったからな。
これからはそれじゃ、困るだろ」
「いたっ」
ふふっとからかうように小さく笑い、炯さんが軽く私の額を弾いてくる。
「そ、そうですね」
今まで箱入りお嬢様生活で、まわりのことはほとんど人にやってもらっていた。
言われるとおり、私ひとりではなにもできない。
それでも。
「でも、私のせいで出勤日が増えるとかいいんでしょうか……」
そこはやはり、気になった。
「みんな今まで、仕事が少なすぎてダブルワークしていたからな。
給料も増えるし、喜んでいるから大丈夫だ。
そうだろ?」
炯さんの隣で、スミさんがうんと頷く。
「そうでございますよ。
坊ちゃんがいない日は本宅へ仕事に行っていたのですが、あちらはなにかと忙しくて、婆の身には堪えるのです。
こちらでゆるりと凛音様のお世話をさせていただいたほうが助かります」
彼女は喜んでいるみたいだし、だったらいいのかな……?
「と、いうわけだ。
それはいいがスミ、何度、坊ちゃんと呼ぶのはやめてくれと言ったらわかるんだ?」
不満げな視線を炯さんが眼鏡の奥から、スミさんへ向ける。
二つ三つ上かと思っていた彼は、今年三十になったそうだ。
これからはそれじゃ、困るだろ」
「いたっ」
ふふっとからかうように小さく笑い、炯さんが軽く私の額を弾いてくる。
「そ、そうですね」
今まで箱入りお嬢様生活で、まわりのことはほとんど人にやってもらっていた。
言われるとおり、私ひとりではなにもできない。
それでも。
「でも、私のせいで出勤日が増えるとかいいんでしょうか……」
そこはやはり、気になった。
「みんな今まで、仕事が少なすぎてダブルワークしていたからな。
給料も増えるし、喜んでいるから大丈夫だ。
そうだろ?」
炯さんの隣で、スミさんがうんと頷く。
「そうでございますよ。
坊ちゃんがいない日は本宅へ仕事に行っていたのですが、あちらはなにかと忙しくて、婆の身には堪えるのです。
こちらでゆるりと凛音様のお世話をさせていただいたほうが助かります」
彼女は喜んでいるみたいだし、だったらいいのかな……?
「と、いうわけだ。
それはいいがスミ、何度、坊ちゃんと呼ぶのはやめてくれと言ったらわかるんだ?」
不満げな視線を炯さんが眼鏡の奥から、スミさんへ向ける。
二つ三つ上かと思っていた彼は、今年三十になったそうだ。