私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
この年で坊ちゃんと呼ばれるのは嫌だろう。

「坊ちゃんはいくつになっても坊ちゃんでございます」

しかしそれはスミさんには効いていなくて、炯さんは諦めたかのようにため息をついた。

「あの。
スミさんって……」

ふたりのやりとりを聞いていると、雇用主と従業員というよりも、もっと気安い関係に見える。

「ああ。
スミとは子供の頃からの付き合いなんだ。
こっちに移るときにも着いてきてくれた。
俺にとって第二の母親みたいなもんだな。
だから凛音も、なにか困ったことあったら相談するといい」

「まあ、坊ちゃま。
母親だなんておこがましい」

照れているのか、スミさんはバンバン炯さんの肩を叩いてる。
炯さんも嬉しそうに笑ってた。
なんだかとてもいい空気で、これからの生活の不安が少し晴れた。

お茶をしながら、これからの生活について話した。

「このあいだも話したとおり、俺は海外出張が多くてこの家にあまり帰ってこない。
いや、これからはできるだけ帰るようにするが」

私の顔を見て、炯さんが言い直してくる。
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