私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
「そうですね……」

また、あのハンバーガーが食べたいとか言っても怒られないだろうか。
でも、デートだったらナシ?

「一、ラーメン」

「ラーメン!?」

そんなものが出てくるなんて信じられなくて、思わず運転する彼の横顔を見ていた。

「二、居酒屋」

「居酒屋!?」

「三、フレンチ」

眼鏡の奥から一瞬、ちらっと炯さんが私をうかがう。

「ううっ、悩む……」

今までの私だったら、フレンチが正解なのはわかっている。
でも、炯さんはこれからは悪いことをたくさんしようって言ってくれた。
だったら、ラーメンも居酒屋もありだ。

「えっと。
じゃあ、居酒屋で」

選びがたい二択だったが、それでもジャッジを下す。
大学で同級生たちから漏れ聞こえる居酒屋とはどんな店か気になっていた。
それに、ラーメンはきっとまた、炯さんが連れていってくれるだろう。

「わかった」

私の答えを聞いて彼は、楽しそうにハンドルを切った。

炯さんが私を連れてきたのは居酒屋……ではなく、若者集うファッションビルだった。

「居酒屋でその格好は浮くからな」

炯さんは笑っているが、それもそうだよね。

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