私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
「他の店も見て、欲しいのがあったらもう何枚か買ってやる。
あと、今日はマンションのほうに泊まる予定だから、着替えとパジャマもな」

「パジャマも好きなの、選んでいいんですか?」

喰い気味な私を両手で宥めるようにし、彼は苦笑いしている。

「ああ。
なんでも好きなのを選んだらいい」

「うわーっ、嬉しいです!」

じゃあ、このあいだファストファッションのお店で見ていいなーって思っていた、もこもこでショートパンツセットのホームウェアとかも大丈夫なんだ。
もう、わくわくしちゃうよー。

興奮気味に手を引っ張って歩く私に、炯さんは笑いながら付き合ってくれた。
さらに服を二セットと下着にパジャマ、あとは今日履く靴とバッグを買った頃には大満足していた。

「いいお洋服が買えました」

「よかったな」

休憩で入ったコーヒーショップ、にこにこ笑う私の前で、炯さんもにこにこ笑ってアイスコーヒーのストローを咥えている。
私の前には前から飲んでみたかった、呪文みたいな名前のフラッペが置かれていた。
もちろん、コーヒーショップは初体験で、注文は自分でさせてもらった。

「でもこれ、どこで着替えるんですか?」

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