私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
聞いたとおり十分程度で、見えてきたタワーマンションの地下に炯さんは車を入れた。

「ここを借りているんだ」

一緒に乗ったエレベーターには、建物の割にボタンが少ない。
どうも高層階住人専用のようだ。

「ようこそ、俺の別宅へ」

「お、お邪魔します……」

招かれた部屋の中へ、おそるおそる足を踏み入れる。
本宅とは違い、こちらはモデルルームかのように作りものめいていた。
まあ、寝るだけのために借りているとか言っていたし、そのせいかもしれない。

「寝室、こっちだから着替えろ」

「はい」

案内された寝室で、先ほど買った服に着替える。
本宅に比べれば狭い寝室には、ベッドとライティングデスクが置いてあった。

髪型も服にあうように変え、メイクを直してリビングへと行く。

「着替えました」

「似合ってるな」

ソファーに座る炯さんが、ちょいちょいと手招きをするので、その隣に座った。

「ちょうど届いてた」

私の左手を取り、手首に彼は腕時計を嵌めた。

「これは……?」

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