私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
実家にいた頃は携帯で常に、どこにいるのか監視されていた。
でもこれからはなにかあったときだけだ。
別に知られてやましいところへ行く気もないが、それだけで気持ちの開放感が違う。

「わるいな」

本当にすまなそうに彼が、私の頭を軽くぽんぽんと叩く。
それが悪くないなって思っていた。

着替えも済んだので、再び街へと出る。
今度は徒歩だ。

「車だと俺が飲めないからな」

さりげなく手を繋ぎ、炯さんは歩いていく。
ただ手を繋いで歩いているだけなのに、酷くどきどきとした。
男の人と手を繋ぐなんて、今までなかった。
幼い頃、父とすら繋いで歩いていないのだ。

「どうした?」

私が黙っているからか、ひょいっと彼が顔をのぞき込む。

「ひゃいっ!?」

俯き気味に歩いていたところへ突然、目の前に顔が現れ、軽く驚いて焦って返事をしたせいで……噛んだ。
おかげで顔が、熱でも出たんじゃないかというくらい熱くなっていく。

「どっか具合悪いのか?」

などと言いつつも、彼の口端は僅かに持ち上がっている。
……ううっ。
わかっていてからかっているんだ。
炯さんは六つも年上で、しかも私は妹と同じ年。
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