私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
「わるい、わるい。
そう怒るな」

口では謝っている癖に、炯さんは私の頬を指先でむにっと潰してきた。

「なにするんですか」

「んー、凛音は可愛いなと思って」

楽しそうに笑ってむにむに頬を押されたら、だんだんと怒る気が失せてくる。

「で、決まったか?」

少しして気が済んだのか、炯さんは手を離したけれど、今のあいだにどうやって決めろというんだろう?
「そうですね……」

飲み物のトップページに戻り、メニューを眺める。
そこには【当店オススメ! 生搾りレモンサワー!】の文字とともにジョッキの写真が載っていた。

「これにします」

オススメだったらきっとハズレはないし、それだけ人気なんだろう。
それは、気になる。

「わかった」

炯さんが端末を操作し、注文をしたとの文字が出てくる。

「あとは食べ物な。
好きなの頼んでいいぞ」

「ほんとですか!」

うきうきと端末のページを捲っていく。
唐揚げとか枝豆とか並んでいるジャンクな料理を見ているだけでわくわくしてしまう。

「お待たせしましたー」

選んでいるあいだに、頼んでいた飲み物が出てきた。
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