私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
お見合い、なので当然ながら、今日は仰々しい振り袖姿だ。
これでは確かに、悪いことどころか街を歩くだけでも不自由しそうだ。

「よし、決まりだ」

楽しそうにコマキさんは、ハンドルを切った。

コマキさんが私を連れてきてくれたのは、ファストファッションのお店だった。

「初めて来た」

同じデザインの、サイズ違いの服がたくさん並べてあるところから新鮮だ。

「なんでも好きなの選べよー」

「あっ、はい」

ぽやっと見ていたところに声をかけられ、我に返る。
普段、着ないような洋服が並んでいる店内は、見ているだけで楽しい。
が、私はこれから悪いことをするための服を買いに来たのだ。
選ばなければ。

無難にいつも着ているものに近いスカートを手に取りかけて、止まる。
今日は悪い子になるために来たのだ。
だったら服も、それなりにするべきでは?

「悪い子の服……」

もうなんだかそれだけでわくわくしてしまう。
さすがに振り袖だと試着ができないので、一発勝負だ。

「けっこう、似合ってる?」

鏡の中の自分に笑いかけると、大きな垂れた目が、嬉しそうにますます垂れる。
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