私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
その笑顔に耐えられなくて、まだジョッキに半分くらい残っていたお酒を一気に呷る。

「きゅぅぅぅぅっ」

飲み干した途端、世界が反転した。

「えっ、おい!」

炯さんの声が酷く遠い。
そこで私の記憶は途絶えている。

……身体が、揺れる。
それが心地よくて、温かいなにかに抱きついていた。
なんだか凄く安心するんだけれど、なんでだろう?
「ったく。
目が覚めたら、もう外ではひとりで飲まないように厳重注意だな」

苦笑交じりの声が聞こえてくる。
迷惑をかけているのはわかった。
謝りたいけれど、うまく頭が回らない。

「……すっごく、幸せですー」

結局、今の素直なこの気持ちが出た。

「そうか。
凛音が幸せだと俺も幸せだ。
俺は凛音を――」

そのあとは完全に寝落ちてしまって、よく聞こえなかった。


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