私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
だいたい、手早く終わらせるとか言っておいて、三回もスる人間がどこにいる?
三回だよ、三回!
おかげで、私はまだヘロヘロだ。

「なー、凛音って」

返事はせずに黙って食事を続ける。
反省するまで絶対に、許さないんだから。
こういうのは最初が肝心だ。
今後もこれだと困るし。

「帰ってきたら焼き肉に連れていってやろうと思ってたんだけどなー」

眼鏡の奥からちらっと、彼の視線がこちらに向かう。
しかし、悪いが焼き肉が特別な食事の一般庶民とは違うのだ。
何度も父が連れていってくれたし、それくらいで釣られたりはしない。

「七輪で焼く、とっておきの店なんだけどなー」

それにぴくっと、耳が反応した。
私が行く焼き肉屋とは無煙ローターのお上品なお店で、七輪などでは焼かない。

「そうか、いい子でお嬢様の凛音は、行きたくないか」

「行きたいに決まってるじゃないですか!」

はぁっと物憂げにため息をつかれた瞬間、勢いよく食いついていた。
そんな私を見て、炯さんが意地悪く右の口端を持ち上げる。
それが視界に入り、いいように彼に弄ばれていたんだと気づいたがもう遅い。

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