私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
「あるだろ。
お義父さんから凛音は五カ国語が話せるから、海外に連れていっても大丈夫だって聞いてるぞ」

「でもそれは、基礎教養として当たり前で……」

「あのな。
大学出てても英会話どころか日本語すら怪しいヤツだっていっぱいいるの。
五カ国語も話せるのは誇っていい」

炯さんは呆れ気味だが、日本語が怪しいというのはさすがに大袈裟では……?
それに父からはこれくらいできて当然、と言われてきた。
これが誇れるなんてやはり信じられない。

「それにお義父さんは、凛音にはファースレディにもなれるくらいのマナーと教養をつけさせたとも言っていたぞ。
そんな人間、海外展開している会社なら、喉から手が出るほどほしい。
俺だって贔屓抜きで凛音を秘書にほしいくらいだ」

うんうんと力強く、彼が頷く。
あれは私としては、ただの基礎教養だと思っていた。
それに、こんな価値があるとは思わない。

「どんな仕事をしたらいいかわからないって言ってただろ?
バリバリ仕事をするのに抵抗がないのなら、外資の営業事務とかに応募してみたらいい」

「そう、ですね。
考えてみます……」

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