私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
私は、私自身が理解していないだけで、本当は大会社の令嬢以外にこんなに価値のある人間だったのか。
もっとも、炯さんが高く評価しすぎているだけかもしれないが。

「とりあえず、この履歴書は書き直しな」

「はい、わかりました」

炯さんにアドバイスされたことを頭に書き留めておく。
これで採用が決まるといいんだけれど。

真面目な話が終わったからか、炯さんは私のつむじにずっと、口付けを落としている。
なんだかその甘さが、いいなって思っていた。

「土産を買ってきたんだ」

傍らに置いてあった大きな紙包みを、炯さんが渡してくれる。

「ありがとうございます。
開けてもいいですか?」

「ああ」

丁寧に包みを剥がしていく。
中からはらくだのぬいぐるみが出てきた。

「えっと……」

炯さんは私を妹としてみているんだと思っていたが、もしかしてそれは今現在同じ年の彼女ではなく、幼き頃の妹さんなんだろうか。

「いやー、らくだを見る機会があって、なんかに似てるなと思ったんだよな」

「はぁ……」

今回の出張はサウジアラビア周辺だったらしいので、彼がらくだに遭遇していてもおかしくない。
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