私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
それよりも、なんか嫌な予感がするんだよねー。

「それからずっともやもやしたまま過ごしてたんだけど、店に積まれているこれを見てさ」

軽く炯さんは、らくだの頭をぽんぽんと叩いた。

「凛音にそっくりだって気づいたんだよね」

彼は上機嫌だが、私はなんともいえない気持ちでらくだの顔を見ていた。
これは喜ぶべき……なのか?

「そんなに似てますか……?」

笑顔が引き攣らないか気を遣う。
しかしそんな私の気持ちを知らないのか。

「ああ。
この、大きな垂れた目がそっくりだ!」

にぱっと実に嬉しそうに炯さんが笑う。
その笑顔はとても眩しくて、つい目を細めてしまう。
それに、そんなに彼が喜んでいるならいいかという気になっていた。

「あとは、これ」

私の手を取り、彼が小箱をのせる。

「開けても?」

「ああ」

了解をもらい、蓋に手をかける。
箱の形状からだいたいなにが入っているか推測はついたが、それでもどきどきした。

「指環?」

ケースの中から出てきたのは、ピンクゴールドのリングの中央にダイヤを配した指環だった。
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