私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
それで、ドイツ語ができる私が採用されたというのが大きい。

先輩の助けも借りつつ、教授リクエストの本を集める。

「あ、このテーマで調べてるんだったら、こっちの本も参考になるかも」

似たようなテーマの本を見つけ、追加する。
それらを抱えてベーデガー教授の元を訪れた。

『ベーデガー教授、頼まれていた本をお持ちしました』

『入ってー』

すぐに中から返事があり、部屋に入る。
何度か訪れたことがあるそこは炯さんの書斎に似ていて、ちょっと親近感があった。

『ありがとう。
仕事が速くて助かるよ』

『いえ。
その、仕事中ですので』

お茶を勧めようとしてくる彼を、やんわりと断る。

『凛音は本当に真面目だよね。
僕はそういうところが好きなんだけど』

ソファーに座りながらおかしそうにくすりと小さく、彼が笑う。
そんな彼を困惑気味に見ていた。

『それでは、失礼いたします』

『あっ、そうだ』

部屋を出ていこうとしたら、彼から呼び止められた。
ソファを立ち、机の上からなにかを掴んで私の元へとやってくる。

『これ。
よかったら食べて』

『ありがとう……ございます』

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