私にワルイコトを教えたのは政略結婚の旦那様でした
けれど炯さんの会社の女性社員で、痴漢被害に遭って電車どころか外に出るのも怖くなり、病んでしまった人の話を聞いたら急に怖くなって、車での送り迎えを承知した。
ちなみに出勤中の出来事は業務中と一緒だからと、仕事に復帰できるよう炯さんはいろいろ便宜を図っているらしい。
そういうところ、本当に尊敬する。

とはいえ、普通は仕事へ行くのに送り迎え付きとかないわけで。
職場には姉が通勤ついでに送ってくれるのだと話を通してある。
さすがに、お手伝いさんの送り迎えですとは言えない。

「ただいまかえりました」

「おかえりなさいませ」

家に帰るとスミさんが出迎えてくれる。

「お疲れになったでしょう、お茶の準備をしてありますからゆっくりなさってください」

「ありがとうございます」

スミさんも炯さんに負けず劣らず過保護で、笑ってしまう。

お茶を飲みながら、ネットバンキングで口座残高を確認した。

「入ってる……!」

摘要の〝給与〟の文字に興奮した。
初めて自分で稼いだお金。
額は多くはないが、それでも嬉しい。

「そうだ」

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