恋はしょうがない。〜同僚以上、恋人未満〜
真琴からふんわりと感じられる桜のような香りを吸い込んで、古庄はにんまりと弛んでくる唇を噛み締めた。
「それでは、本日の議題は以上です。これにて第15回職員会議は終了します。皆さん、お疲れ様でした」
司会の教頭がそう言って会議を締めくくると、職員たちは席を立って、職員室へと戻り始める。
真琴もペンをペンケースに納め、資料を手に立ち上がる。それに合わせて、古庄も立ち上がろうとした時、
「ゔ…………っ!!!」
と声にならない呻きとともに、浮かした腰をもう一度椅子へと戻した。
気のせいかと思い直して、もう一度腰を動かしてみる。
ズキン!!
大きな痛みが体を貫き、古庄は自分が尋常な状態ではないことを悟った。
——……う、ウソだろ……。
古庄が悶絶している間にも、職員たちは会議室を後にし、真琴の姿もドアの向こうに見えなくなった。
一人だけ残っている教務主任が、板書を消している。それから消灯をしたら、ここを施錠しなければならないはずだ。
だけど、古庄は動けない。その異常に教務主任が気づくのと、途中で引き返してきた真琴が再び姿を現すのと、ほぼ同時だった。