恋はしょうがない。〜同僚以上、恋人未満〜




「はぁ……」


と、古庄は落胆のため息をついた。
塩尻は、真琴を除くと古庄が一番に信頼している同僚だ。こうやって困っている時にすぐに行動して助けてくれるのは、本当にありがたい。だけど、やっぱり真琴が一緒じゃないことに、古庄は心が残ってしまう。


「そんなに落ち込まなくても、古庄先生はまだ若いからすぐに治りますよ」


と、ほぼ同じ世代の塩尻から励まされる。彼はいかにもラガーマンらしく日に焼けて精悍で溌剌とした男だった。


病院に着くと、塩尻は走って車椅子を借りてきて、古庄を抱え上げてそれに乗せてくれた。さすがに、真琴にこんなことをしてもらうわけにはいかない。
そう考えると、やはり塩尻が連れて来てくれたのは一番適切だったのだと納得する。


塩尻は古庄の保険証を手に受付を済ませ、問診票を持ってきてくれる。レントゲンや血液検査、診察室にも車椅子を押して付き添ってくれ、体育会系の後輩さながら、甲斐甲斐しく動いて世話をしてくれた。



そして、下された医師の診断は、予想通りギックリ腰だった。


「激しい痛みの間は温めないように、シャワーはいいけど入浴はダメですよ。マッサージもダメ。湿布を出しとくからそれを貼って、とにかく安静にしておくこと。2、3日もすれば鈍い痛みになってくるから、それからは温めたり動いたりして、体を慣らしてください」


「……はい」



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