恋はしょうがない。〜同僚以上、恋人未満〜
医師の言うことに、神妙な顔つきで返事をする古庄の横で、塩尻は全くその通りと言わんばかりに頷いている。
ギックリ腰のことをあまり知らない古庄に比べ、塩尻はその対処法などすでに知っていたのだろう。
「激しい痛みがずっと続いたり、ぶり返したりした時には違う病気かもしれませんから、また来てください。今日はとりあえずこれで様子を見てください」
「はい。ありがとうございました」
と、前傾できない古庄は頭を数センチ上下させるだけの会釈をした。
塩尻が車椅子を切り返して、診察室を出て行こうとした時、
「あ、それと!」
と、古庄が突然思いついたように声を上げた。
塩尻は車椅子を止め、机に向いていた医師も振り返る。
二人に見つめられ、古庄は今からするつもりだった質問を言い淀んだ。だけど、気になっていることは、この際ちゃんと聞いて帰った方がいい。
この場に女性看護師がいないことを確かめて、古庄は改めて口を開いた。
「あの…、医師。俺、ちゃんと子作りできますよね?」
端正な顔を深刻な面持ちにして、古庄はあくまでも真面目に医師に質問した。