気付いて……………/花開けば朱に染まる

演じる

「のんちゃん、このアニメ見た?」

由香はそう聞きながらスマホの画面を私に見せてきた。
そこには、今とても人気のアニメの画像があった。

「うーん。アニメは見たことないけど本なら持ってるよ。私は主人公のアカネの真っ直ぐさが大好きなんだよね」
「え〜! のんちゃん本持ってるの? 今度貸してもらってもいい? あ、私もアカネちゃん大好き!」

アニメなんて、滅多に見ない。

昔から文字で読むのが好きだったから。
それに、家族みんなが好みが違いすぎるのもある。

別に、不幸せなわけではない。

ただ、家族それぞれが馬が合わないところがあって、少し喧嘩や言い合いも多い。
ただそれだけだ。

そんなんで、気落ちしては人気者ではいられない。
私は人気者でなくてはいけないから。

だから、人に弱みなんて見せられない。
そのために、私は人気者を演じる。

“花綵《かさい》のん”という人気者を。
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