気付いて……………/花開けば朱に染まる

「付き合ってんの?」

その日の昼休み、意外にも楠木に呼び出された。

「ね、のんのん。本当に白澄となんもなかったのか?」

なぜ、彼が私と深田についてそこまで知りたがるのか分からない。

「本当になにもなかったよ。それがどうかした?」

私が問いかけると、楠木は少し間を空けて、それからゆっくりと口を開いた。

「単刀直入に聞くよ。のんのんは白澄と付き合ってんの?」
「………え?」

あまりにも急すぎるその質問に、私は驚き固まった。

「いや、俺昨日さ、夜散歩してたんよ。んでそしたらさ、のんのんのことお姫様抱っこして歩いてる白澄を見かけたの。夜遅くに高校生男女がお姫様抱っこで歩いてんだよ。そら、付き合ってるとしか思わんよ」

まさか、楠木にも見られていたなんて。
いや、でもこの様子じゃ私が泣いていたのを見たわけではないのだろう。

というより、“なにかがあった”ことを知っていて、「何かあった?」とか聞いてたのか。

「付き合ってないし、私昨日深田となんて会ってないよ?」

あくまでも会っていないを前提に。
あくまでも冷静に、あくまでも普段通りに。

「いや、俺しっかりあとつけて『花綵』って表札確認したよ」

平然とストーカーじみたことをするな。

「なに、怪我でもしてたの? 寝てたの?」

お姫様抱っこをされていた意味を問われる。

「………わからない。多分寝てたんだと思う」

仕方ない、と私は深田と会った事実を認める。

「あれ? じゃあなんで白澄はのんのんの家知ってたんだ?」
「前に何度か呼んだことがある」
「は? 白澄だけ? ずるー」

なぜずるいのだ。

「てか、その呼んだときってのは親いたの?」
「いなかったけど」
「えー。高校生男女が2人っきりでなんにもなかったの?」
「なかったよ。逆に、なにがあるの?」
「えー………。白澄って意外と草食系なんだな」

なんにせよ、これからは絶対誰にも見られてはならない。

私があんなに弱いやつだと知れたら、きっとみんなが幻滅する。

だから、絶対に見られてはいけない。
私が人気者であるために。
< 6 / 11 >

この作品をシェア

pagetop