未完成な世界で今日も
「もうっ、一花~、私の感想も褒めてよ~」
「はいはい、千幸最高!」
「あ、今の適当じゃん」
二人の笑い声に私もつられて口角を上げる。そして一花がふと眉を下げた。
「あーあ、こんなに楽しい高校があと一週間で終わっちゃうなんて」
「寂しすぎる〜、卒業式の全体で歌う卒業ソング! あれ歌ったら絶対号泣ー」
千幸の泣き真似を見ながら、一花が私の肩をたたいた。
「でもほんと卒業は寂しいけど、アタシ、美波の卒業式のピアノ伴奏楽しみにしてるんだよね」
「あ! 私もー!すっごく楽しみっ」
「あ、うん……」
「音大行ってもしコンサートとかするときは絶対行くからね」
「うんうん、アタシも聴きに行くっ」
「……ありがとう」
担任の藤元先生しか知らないが、私は四月からの進学先を音大から一般の私立大にギリギリで変更したのだ。私は精一杯の笑みを二人に向けながら、心の中でため息を吐き出した。
予鈴が鳴ると同時に二人が席に戻っていく。そして今日も遅刻ギリギリでやってきた橋本くんが私の隣に座ると共に授業が始まる。
私はそっと自分の左耳に手を当てた。
(……もう一生聞こえないんだな)
「はいはい、千幸最高!」
「あ、今の適当じゃん」
二人の笑い声に私もつられて口角を上げる。そして一花がふと眉を下げた。
「あーあ、こんなに楽しい高校があと一週間で終わっちゃうなんて」
「寂しすぎる〜、卒業式の全体で歌う卒業ソング! あれ歌ったら絶対号泣ー」
千幸の泣き真似を見ながら、一花が私の肩をたたいた。
「でもほんと卒業は寂しいけど、アタシ、美波の卒業式のピアノ伴奏楽しみにしてるんだよね」
「あ! 私もー!すっごく楽しみっ」
「あ、うん……」
「音大行ってもしコンサートとかするときは絶対行くからね」
「うんうん、アタシも聴きに行くっ」
「……ありがとう」
担任の藤元先生しか知らないが、私は四月からの進学先を音大から一般の私立大にギリギリで変更したのだ。私は精一杯の笑みを二人に向けながら、心の中でため息を吐き出した。
予鈴が鳴ると同時に二人が席に戻っていく。そして今日も遅刻ギリギリでやってきた橋本くんが私の隣に座ると共に授業が始まる。
私はそっと自分の左耳に手を当てた。
(……もう一生聞こえないんだな)