性悪毒舌アイドルと甘すぎる日常を。
「よくその口の悪さでアイドルできるよね!」


「顔が良いからな」


……黙れ。


なんだこの男。


ナルシストめ!


即答すんな!


「そんなに元気そうなら私もう帰るからね!仕事終わったらちゃんと病院行きなよ!」


心配して損したわ!


ったくもう…。


「わかってる。ありがとう。迷惑かけて悪かった」


っ!


「……迷惑なんかじゃないから」


不意打ちで、優しい声色やめてよね。


ドキッとしちゃうじゃん。


それに、本当に迷惑なんかじゃない。


「…心配はかけられたけどね」


だからこれからも、困ったときは頼ってほしい。


…なんてね。


この人が私を頼ることなんてもうないだろうな。


「ありがとな。んじゃ、またな」


……なんだろう、胸がくすぐったい。


変なざわめき。


“ありがとう”


優しい声色が脳裏に反芻する。


「…お大事に」


それを断ち切るように、彼の家の扉を閉めた。
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