性悪毒舌アイドルと甘すぎる日常を。
「なに?」


『社長の娘パワーで社員の休み増やしてやれねーの?』


「…なにそのパワー」


そんなのないよ。


社長としてのパパは、私が全く知らない別人。


それはこの前身をもって痛感した。


パパは仕事のことになったら私の言葉なんて聞き入れてくれない。


『俺はワガママ言って休み取ることだってできるけど、マネージャーやスタッフはそんなことできねぇから。お前が少しでも口添えしてくれりゃ、娘を溺愛してる社長なら変わってくれるかなって』


「……社長令嬢って、皆が想像してるような権限なんて何も持ってないよ」


『はぁ?俺のために何かしたいんだろ?なんとかしろよ』


…はっ!?


なんだこいつ!


上から目線すぎでしょ!


「ホントあんた腹立つよね!!」


『お前は、それぐらいキャンキャン騒がしい方が似合ってる』


諭すような柔らかい声だった。


「…な、なによ。バカにしてんでしょ」


『どうだかな。ま、よろしく頼んだ』


「そんなこと言われたって―」


『安心しろ。期待してねぇから』


「はぁ!?ほんと、いちいち言葉選びに悪意があるよね!マジむかつく。一生くたばってろ性悪野郎!」


『泣きながら電話かけてきたくせによく言うよ』


「泣いてないし!妄想キモ!」


『山梨まで来ようとしてたくせに?』


「それはっ、つい!」


『ふーん。まぁいいや。休みの件、よろしく』


「はいはい。ギャフンと言わせてあげるから期待しててよ」


『はいはい、ギャフンギャフン』


「ったく、あんたねぇ!」


『じゃーもう切るから。心配ありがとな。じゃ』


こっちが返事をする前に電話が切れ、途端に無音になる。
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