余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
「実は、私ね……」


余命宣告を受けているの。


その言葉は病室内に溶けるように消えていった。


大樹の顔を真っ直ぐ見つめることもできなくて、真っ白なシーツを視界いっぱいに入れる。


「あと2ヶ月で、私死ぬの」


声に出して伝えると途端に恐怖心がわきあがってきて体が震えた。


自分の命があと2ヶ月しかないなんて、やっぱりまだ信じられない。


けれど何度も倒れるたびに、それが現実なのだとようやく理解しつつあった。


「いつまで学校に通えるかもわからないの」


萌の告白に大樹はずっと黙っていた。


この小さな体にこれほどの大きな悩みを抱えて生きてきたなんて、考えるだけで胸が詰まる。


「きっと、いつまでも通えるよ。ずっと」


その言葉に萌はやっと顔を上げた。


目には涙の膜ができていたけれど、それがこぼれだしてしまわないようにグッと力を込めている。


「ずっと?」


「あぁ。それで、萌は夢も叶えるんだ」


夢。


私の夢はお嫁さんになること。


世界一好きな人と結婚して、世界一幸せなお嫁さんになる。


いつか、この話を大樹にしただろうか?


「萌は、俺のお嫁さんになるんだ」


大樹はそう言うと座ったままの萌の体を抱きしめた。


大樹の熱いくらいの体温が伝わってきて、萌の涙腺はついに崩壊した。
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