余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
「トランプもってきたんだ。なにして遊ぶ?」


「ふたりだから神経衰弱とかいいんじゃない?」


そうして病室を出ていくときには必ずキスをした。


萌は必ず顔を真っ赤にそめてうつむいて、いつまでも慣れない様子だ。


「それじゃ、また明日くるから」


「うん。待ってる」


手を振って病室から出た瞬間、大樹の手を誰かが掴んだ。


ハッとして顔を向けるとそこに立っていたのは大学病院にいるはずの兄だった。


兄は険しい表情で大樹を睨みつけている。


大樹はとっさにその手を振りほどいて兄を睨み返していた。


「どうしてここにいるんだよ!」


院内なのでそれほど大きな声は出せないが、それでも十分に迫力のある声で大樹は威嚇する。
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