余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
「やった!」


子供のように両手を上げて喜ぶ萌に担当医が釘を差すために口を開く。


「学校には行くつもりか?」


「もちろんです!」


萌は大きく頷く。


その目はキラキラと輝いていて、自分が再び学校へ行けると信じて疑っていない。


担当医は軽くため息を吐き出した。


「わかった。ただし今まで以上に注意して行くこと。また倒れたら、今度こそ退院は難しいかもしれない」


その言葉に萌は一瞬表情を固くした。


次倒れたら、もう学校へ行くどころか退院も難しくなるかもしれない。


そう告げられて自分の病気の重さを再確認した気分だった。


それでも萌は嬉しかった。


またあの空間へ行って、みんなと同じように授業を受けることができる。


そのことが、いまの萌にはなによりも宝物だった。


「わかりました」


萌はベッドの上で背筋を伸ばして、大きく頷いたのだった。
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