余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
確かに、この先なにがやりたいのか明確になっている生徒なら進学先くらい考えていてもおかしくないかもしれない。


だけど萌にとってそれは衝撃だった。


自分にとって高校2年生といえばまだまだ学生で、青春真っ盛りで、受験や就職に悩むのは3年生になってからだとばかり思っていた。


「まぁ、行ってみたい学校はあるんだけどね」


「え!? それってどこ!?」


驚いて聞くと希はいくつかの専門学校の名前を上げた。


どれも絵に関する学校だ。


「へぇ……そうなんだ」


思わず間抜けな声が出てしまった。


「なに? 萌はまだ決めてないの?」


決めていないどころか、どんな学校があるのかすら知らない。


絵を描くことは好きだけれど、それを突き詰めていくかどうかもまだわからない。


そんな自分が途端に子供っぽく思えてうつむいてしまった。


大樹ももう、将来のことをちゃんと考えているんだろうか?


「あれ? でも萌って将来の夢があるって言ってなかったっけ?」


そう聞かれてカッと顔が熱くなるのを感じた。


希と仲良くなった高校1年生の頃、たしかに夢の話しをしたことがある。


そのときについしゃべってしまったのだ。


「確か、素敵なお嫁さんになりたいとかって――」
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