余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
自分が戻ってきたことを、どんな風に感じるだろうか。


怖い気持ちもあったけれど、また教室に入れることはやっぱりうれしかった。


萌の心の中には複雑な感情が入り混じり、なかなか足を踏み出すことができない。


しばらくそうして立ち尽くしていると、後から足音が近づいてきた。


そして萌のすぐ後で立ち止まる。


「あ、ごめん」


邪魔になっているのだと思い体を横によけたとき、後に立っていた希と視線がぶつかった。


ハッと息を飲み、目を見開く。


希も同じように萌を見つめていた。


「お、おはよう!」


一瞬言葉に詰まったものの、萌はいつもどおりの笑顔を浮かべた。


心臓はドキドキと早鐘を打っていて、希の次の言葉を待っている。


「……おはよう」
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