余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
「わぁー! やめて!」


慌てて大きな声を上げて希の声をかき消した。


そう、私の夢は素敵なお嫁さんになること。


イラストレーターとか、漫画家とか、画家を目指すこのクラスでただひとりと言ってもいいかもしれない。


お嫁さんになりたい……。


その夢は実は今でも変わっていなかった。


好きな人のお嫁さんになること。


それはきっと女の子にとって最大の幸せなんだと、信じている。


「そんなに恥ずかしがることじゃないと思うよ?」


萌の大きな声に顔をしかめながらも希はそう言ってくれた。


「だって、みんなちゃんとした夢があるのにお嫁さんだなんて恥ずかしいでしょ」


「恥ずかしくなんてないよ。お嫁さんになりたくて、なれない人だっているんだから」


希の怒ったような声に次の言葉を告げなくなってしまった。


確かに、お嫁さんだって誰もがなることができるものじゃない。


そのことをすっかり忘れてしまっていた。
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