余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
そのたびに萌は驚いた顔をして「おはよう」と挨拶を返す。


自分の席に到着するころにはすっかり昔と同じ状況になっていることに気がついた。


「あのさ」


教科書をカバンから移している時に希に声をかけられて手を止めた。


「え?」


「ごめんね。無視してて」


ぶっきらぼうに、萌から視線を外しながら言う。


「別に、萌のことが嫌いになったとかじゃなくて。その……ちょっと、嫉妬してただけだから」


「嫉妬?」


首をかしげて聞き返すと希はムッとした表情を浮かべた。


これは聞いちゃいけないことだったのかと思って後悔していると、希は観念したように大きく息を吐き出した。


「本当に、萌も大樹も鈍感だよね」
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