余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
もう誰も萌が泥棒猫だなんて言わなかった。


ふたりはちゃんと愛し合い、そこに入る空きはないとわかっている。


「本当にごめんねふたりとも。私、どうしても納得できなくて嫌な女だった」


大樹の後で希が謝罪する。


でも、もうそんなことどうでもよかった。


好きな人が隣にいて、クラスのみんなからも祝福されて。


萌にとってはそれだけで十分だ。


「昨日も言ったけど、退院おめでとう萌」


大樹は萌の両肩を優しく手で掴んでささやく。


周囲の空気が少し緊張しているのがわかったけれど、萌は気が付かないふりをして大樹に身を任せることにした。


そしてふたりはキスをしたのだった。
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