余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
といっても萌に無理はさせられないので、何度か喫茶店やファミレスで休憩を取った。


それでも萌はずっと調子がよさようで、頬もピンク色に染まっていた。


「今日は随分と調子がいいみたい」


太陽が傾いてきたとき、萌はそう言って大樹の腕に自分の腕を絡めてきた。


時間も遅くなってきたし、足は自然と家に向かっていたときだった。


「もう少し散歩でもするか」


大樹の言葉に萌は嬉しそうに微笑む。


萌の寿命が残り一ヶ月ほどしかないなんて、信じられないことだった。


「そこの公園に寄りたい」


萌の提案に頷いてふたりは人の少なくなった公園に足を踏み入れた。


ついさっきまで子供たちの遊んでいたなごりがあちこちに残っている。


「子供ってどうしておもちゃを持って帰らないんだろうね」
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