余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
自分から動くことができるのに、そうしない。


なぜなら、生まれたときからそうしつけられてきたから。


「お姫様、王子様が到着しましたよ」


砂の城の横に人間っぽい塊を作って大樹は言った。


「えぇ、これが王子様?」


萌はどこか不服そうな顔だ。


でも仕方ない。


ちゃんとした人間を作るには時間が必要だから。


「城から出てくる時間です。お姫様」


構わずに続けると萌は少し笑って、城の前にお姫様らしき人物を作った。


どっちも負けず劣らず人間には見えない出来栄えだ。


「このまま連れ去ってもいい?」
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