余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
萌が人形から大樹へと視線を移動させる。


その目はさっきよりも少し潤んでいるように感じられた。


「行きましょう。俺のお姫様」


呟いて、キスをする。


本当に物語のように萌をどこかへ連れ去りたい。


病気から遠く遠く離れた場所へと誘拐してしまいたい。


もう二度と、病魔が萌に近づけないようにしたい。


心から、そう願ったのだった。
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