余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
「本当によかったわね」


夕飯の準備をしながら母親がつぶやく。


萌は隣で手伝いをしながら頷いた。


どうして数値が良くなっているのか自分でもわからない。


若いとがんの進行も早いというけれど、あれはただの噂だったのかもしれない。


「きっと萌は特別なのよ。生きていきなさいって神様が言ってるのかも」


「そうだったらすごいね。私、神様に選ばれた人間なんだ」


ふたりは冗談を言い合い、笑い声を上げたのだった。
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