余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
大樹にキスだけされた女子生徒たちは影で萌をそんな風に呼んだ。


「うん。それがいいかもしれないね」


萌の現状をよく知っている希は苦い顔をしながらも頷いた。


これ以上傷つく萌を見ていたくない。


なにより、大樹の浮気が次々と発覚し始めた頃から萌の顔色は明らかに悪くなっているのだ。


きっとストレスを溜め込んでいるに違いない。


「直接話しをしに行くの?」


希の質問に萌は左右に首を振った。


面と向かって別れを切り出す勇気はない。


大樹の顔を見たら、許してしまいそうになるかもしれない。


「メッセージで伝えることにする」


「そっか。それでいいのかもしれないね」


萌は小さく頷いたのだった。
< 211 / 274 >

この作品をシェア

pagetop