余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
咳が出てとまらない。


呼吸が苦しい。


起き上がろうとしても体に力が入らない。


全身から血の気が引いていき、苦しさのあまり涙がにじむ。


あまりにも苦しい呼吸を繰り返しているので、両親がすぐに気がついて駆けつけてくれた。


常備薬を飲んでしばらく横になっていても様態は一向によくならず、父親の車で病院へ向かうことになってしまった。


その時間が異様なほどに長く感じられて、このまま死んでしまうんじゃないかという恐怖心に襲われた。


それでもどうにか運び込まれた萌を見て、担当医は息を飲んだ。


「すぐに処置をします」


早口に両親へ向けてそう伝え、萌はベッドに寝かされて運ばれていったのだった。
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