余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
そんな期待を見事に裏切られてしまったようだった。


まるで神様が萌の運命を弄んでいるようにも感じられる。


誰もいない病室内で鼻をすすりあげたとき、ドアが開く音がして顔を向けた。


一瞬、そこに立っているのが誰なのか判別がつかなかった。


証明が落とされた暗い病室にいる萌から見たその人物は、廊下からの逆光で暗く染まっていた。


「萌」


その声に心臓がドクンッと跳ねる。


「どう……して?」


大樹が病室に足を踏み入れてきた。


毎日会っていたはずのこの顔が、懐かしく感じられる。
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