余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
☆☆☆

森の中に入って20分ほど経過したとき、不意に前方にひらけた空き地を見つけて大樹は懐中電灯を向けた。


空き地の中央には古ぼけた建物があり、空き地へ入る道には木製の鳥居が立っているのだ。


そこだけ木々は伐採されていて、今でも人が来ていることがわかった。


「あった……」


今にも崩れ落ちてしまいそうな鳥居と建物を見つめて、呆然としてつぶやく。


まさか本当にこんな場所に神社があるなんて思ってもいなかった。


藁にもすがる思いでここまできたことは、決して無駄ではなかったのだ。


大樹はすぐに一礼して鳥居をくぐり、神社の前までやってきた。


本来置かれているはずの賽銭箱は朽ち果てて木くずとなり、本殿の中にはご神体があるのどうかもわからない神社だ。


そんな神社の前で大樹は膝をついて頭をさげた。
< 228 / 274 >

この作品をシェア

pagetop