余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
ネット上の噂を本気にしてここまでやってきた、虚しい男だとは微塵にも思わなかった。


「どうかお願いします! 萌を助けてください!」


そうして時間が過ぎていき、大樹の声がかすれてきた。


広場の周囲は朝日で白く輝きはじめ、命が目を覚まし始める時間帯。


ふいに大樹の周りだけが明るく輝いた。


大樹は目を細めて光の出どころをさぐる。


どうやらその光は空から指しているようだけれど、眩しすぎて直視できなかった。


光から逃れるために一瞬ギュッと目を閉じた大樹が次にみたものは、地面に落ちているお守りだった。


赤色をしたそのお守りにはなにも書かれておらず、どこからやってきたのかもわからない。


「なんだこれ……」


お守りに手を伸ばして拾い上げた瞬間、大樹の頭の中に誰かの声が流れ込んできた。

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