余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
それなのに萌本人はその道へ進む気がないようで、将来の夢をお嫁さんになることだと本気で言っている。


それはそれで否定するつもりはなかったけれど、そんな萌を見ていると少しだけ胸のあたりがモヤモヤとした気分になってくる。


今の希はスランプにはまっているから、余計に萌のことが気にかかってしまうのかもしれない。


「すごい絵」


そう呟いたとき、足元になにかがぶつかって立ち止まった。


下をむいて思わず悲鳴を上げそうになる。


「萌!?」


倒れている萌の隣にしゃがみ込み、声をかけた。


萌はしっかりと目を閉じていてゆさぶっても起きない。


一体どうしたんだろう?


今まで萌が倒れたことなんて一度もなかったはずだ。


パニックになりかけながらも、慌てて美術室から出た。


とにかく誰かを呼んでこないといけない。


足は自然と職員室へと向かう。


しかし、歩きながら脳裏に浮かんでくるのは最近の萌の態度だった。
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