余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
「そ、それなら……っ」


涙をためた希が口をはさむ。


「大樹は、私とだけキスすればいい。不特定多数の子を傷つければその分また悪い噂も立つし。そうなるくらいなら、1人に決めておいてもいいと思う」


希にとって他意はなかった。


心から萌を助けたいと思っている。


自分にできることは、大樹の力を発揮するために手伝うことくらいだった。


「希の命をもらうの?」


萌が驚いた声をあげる。


「そうだよ。少しくらい命が減ってもどうってことないから」


「そんなこと、できないよ!」


もし明日希が死ぬとしたら?


その1日を自分がもらうことになったら?


そう考えると胸が傷んで仕方ない。


人の寿命なんて誰にもわからないものなんだから。

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