余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
「絵、ですか?」


萌が美術部に入部していることはもちろん知っている。


病気になってからは家に持ち帰って作業していることも聞いていた。


だけどどんな絵を描いているのか、絵が完成したのかどうかは知らされていない。


もしかしたら、未完成のまま家に置かれているのかもしれない。


「よかったら、あの子の絵を見に来てやって」


「あ、はい」


そう言うと母親は大樹に頭を下げて病室へ入っていったのだった。
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