余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
部屋の隅にはキャンバスが置かれていて、その横の棚には絵の具のパレットが出したままになっている。


今にもそこに萌が立って絵の続きをかき出しそうだった。


「これが萌の絵か……」


萌の絵をこうしてちゃんと見たのは初めてのことだった。


頭の中にあるファンタジックな絵をそのまま描くのだと言っていたけれど、色使いも面白くてつい見入ってしまう絵だった。


「この真中のはなんだろう?」


希がキャンバスの真ん中を指差して言った。


そこにはポッカリと穴が開いたような空間があり、ふたりの人物が立っているのがわかる。


ふたりとも白い服を着ているが、それがなにを描いていたのかまではわからなかった。


「それはきっと、自分と大樹くんを描いていたんだと思うの」


後から萌の母親に言われて大樹はハッと息を飲んだ。
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