余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
そう言われて見てみれば人物の輪郭が自分に似ている気がする。


だとしたら、この服装は……。


「萌の夢はお嫁さんになることだから」


希が隣で呟いた。


描かれている人物の頭上には白い鳩が飛び、祝福の鐘が鳴っている。


これは自分と萌の結婚式……?


そう気がついた瞬間胸の奥が熱くなった。


萌はお嫁さんになるという夢を捨ててはいなかった。


今でもきっとその夢を見続けているんだろう。


思わず涙がこみ上げてきそうになって、あわてて目の奥に力をこめて引っ込める。


こんなところで泣いたら、萌の母親に申し訳ない。

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