余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
☆☆☆

萌の葬儀には結婚式の写真が使われて、詰問客たちの涙を誘った。


けれど写真の中の萌は本当に幸せそうで、大樹の涙はひっこんでしまった。


こんなに幸せな萌を前にしたら、もう泣くことはできなかった。


「あのお守りは?」


不意に参列者から声をかけられて振り向くと、そこには兄が立っていた。


「びっくりした。来てたのか」


「お前のことが心配でな」


神出鬼没な兄に驚きながらもポケットの中を確認する。


「あれ? お守りがない」


いつでもそこに入れておいたはずのお守りが手に触れなくて、大樹は他のポケットもさがしてみた。
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