余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
しかし、やはりお守りはどこにもなかった。


それを見ていた兄はホッとしたように表情をやらわげた。


「役目を終えて消えたんだな」


「そっか……」


萌は死んだ。


自分の願いも消えたのだ。


「でもさ、俺よかったと思ってるんだ」


大樹の言葉に兄は真顔に戻る。


「確かに神の領域で、人間の俺がやっちゃいけないことだったかもしれない。だけど、そのおかげで萌はあんな笑顔になれたんだと思うんだ」


遺影の萌を見つめてそっと微笑む。

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