余命宣告された私が出会ったのは、キスで寿命を伸ばすことのできる人でした。
「肺がんは初期症状がほとんどなく、進行してからでないと気が付かない場合が多いです。最近、呼吸が苦しかったりしたことは?」


質問されて、萌は呆然としたまま左右に首を振った。


よく思い出してみれば息切れするときもあったかもしれないけれど、よく覚えていなかった。


みんなと同じように授業を受けていたし、部活にも出ていた。


休日には希と遊びに出ることも当たり前だった。


そんな自分が、ガン?


信じられずにまばたきを繰り返す。


本当にそんな病気が潜んでいたとしても、まだまだ初期段階のように思われる。


だけど実際はすでに進行しているということだった。


「ガンということは、これから手術とかするんでしょうか?」


青ざめた顔で、だけどしっかりとした声で父親が質問する。


そうだ。


ガンだと言われたら手術や治療のことを考えないといけないんだ。


ボーっとしていてまだ理解が追いついていないけれど、どうにか医師の言葉に耳を傾ける。


自分の体のことなんだからしっかりしなきゃいけない。


膝の上でギュッと手を握りしめた。


「残念ながら、手術はもうできません」


先生の声がひときわ小さくなった。
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